クラシック音楽録音の最前線で活躍するTake5 Music Production。
2013年に設立されたスウェーデン拠点のクラシック専門録音プロダクションで、世界中のレーベルや放送局、オーケストラと協働し、高品質な音源制作を手がけています。
その高品位なサウンドを20年にわたり支えてきたのが、RMEのMADIテクノロジーです。
スタジオやホールなど常設システムを前提としたネットワーク・オーディオ規格が普及するなかでも、機動性と柔軟性が求められる現場において、MADIは今なお重要な役割を担っています。
本記事では、Take5 Music Productionの制作現場を支える技術的背景と、RMEとの長年にわたる信頼関係をご紹介します。
変化する現場を支えるMADIの柔軟性
AVB/MilanやDanteなどのネットワーク・オーディオ規格は、特に固定設備環境において大きな利点を持つ高精度なオーディオ伝送技術です。一方、Take5 Music Productionでは、設営時間をできるだけ短縮しつつ、高い機動性と柔軟性が求められる現場が多いため、信頼性の高い選択肢の一つとしてMADIを採用しています。
Take5 Music Productionのコントロール・ルームの中核を担うのが、MADIface XT IIです。
DAWへの入力、アーティストとのコミュニケーション(トークバックやリッスンバック)、スピーカーやヘッドフォンを通じたモニタリング・コントロールまで、すべてを一元的に管理しています。また、RME独自のデジタルオーディオストリームの計測、解析ツールである「DigiCheck」で、音声信号の技術的な状態を常に詳細に把握できます。
また、バックアップ用ノートPCに2台目の MADIface XT を接続することで、万が一のトラブルにも対応できる冗長体制を整えています。これにより、フィールド録音でも高い信頼性を確保しています。

Take5 Music Productionは変化の多い環境で作業することが多く、その場の状況に応じて迅速にシステムを拡張します。たとえば、ミネソタでのマーラー《交響曲第8番》の収録では、当初48チャンネルだったシステムを約80チャンネルまで拡張しましたが、MADIface XTやその他のRME機器を使うことでスムーズに対応することができました。
このような現場では、ネットワーク設定に時間を取られないことが非常に重要です。MADIでは、96 kHzのサンプル・レートでオプティカル・ケーブル1本あたり32チャンネル単位で音声信号を扱えるため、効率的かつシンプルにシステムを構築できます。Octamic XTCや12Micを数台追加するだけで、必要なチャンネル数へと柔軟に拡張することも可能です。
例えば、バッハ・コレギウム・ジャパンと鈴木雅明氏によるメンデルスゾーン《讃歌(Lobgesang)》の録音では、日本に保管していた完全モバイル仕様の録音キットを使用し、50チャンネルの録音環境を構築しました。コントロール・ルームの事前準備は一切行わず、プロデューサーとエンジニア、ステージスタッフという少人数のチームで、何も設営されていないステージの状態から作業を開始し、わずか4時間で録音を開始できる体制を整えました。
RMEとともに追求する、理想の録音
約20年前、Take5 Music Productionは、すべての録音における信号経路でRME製品のみを使用するという決断を行いました。その背景には、卓越した音質と高い信頼性があります。RMEのマイク・プリアンプやオーディオ・インターフェイスは常に安定した性能を発揮し、プロフェッショナルの現場において最高水準のクオリティを提供してきました。
ピアニストのアレクサンドル・カントロフ(Alexandre Kantorow)氏は、Take5 Music ProductionにおけるRME機器での録音について、動画内で次のように語っています。
「これまでの録音はいずれも音のクオリティの高さを評価されています。毎回、非常に自然な音に仕上がっていて、本当に驚かされます。聴いているうちに、それが録音であることすら忘れてしまう。ただ音楽がそこにある。それこそが、録音のあるべき姿だと思います。」
RMEのMADI機器が支えるTake5 Music Productionの高品位な録音
世界の名演を記録するプロフェッショナルチーム「Take5 Music Production」とは
Take5 Music Production は、スウェーデンのストックホルム近郊を拠点とするクラシック音楽専門の録音制作会社です。2013年に、ドイツ人トーンマイスターのインゴ・ペトリー、ハンス・キプファー、イェンス・ブラウン、マリオン・シュヴェーベル、トーレ・ブリンクマンによって設立されました。メンバーはBIS Recordsで10年以上にわたり活動してきた豊富な経験を持っています。
2017年には、フランスの権威ある音楽賞ディアパゾン・ドール・ドゥ・ラネの「Prise de Son(録音部門)」で初受賞するなど、高い評価を得ています。
世界各国のレコードレーベル、放送局、オーケストラと協力しながら、多くの音楽家と密接な関係を築いており、制作においては、アーティストと同じ目線で細部までこだわり、最高の演奏を引き出すこと、そしてその演奏にふさわしい自然で誠実な音を届けることを大切にしています。
RMEの信頼性の高い機材は、これまでに1500枚以上の(SA)CD制作に貢献してきました。その多くは国際的に高い評価を受けています。
また、長年にわたるハイクオリティな音源制作に加え、コンサート映像やさまざまな映像作品の制作にも独自のアプローチを確立してきました。専門的な音楽教育と長年の経験を活かし、楽譜に忠実であることを大切にしながら、音楽そのものを映像表現へと昇華させることを目指しています。撮影では常にシネマカメラを使用し、多様なレンズ選択などを通してその美学を支えています。

音の新たな可能性へ
ポストプロダクションの分野では、クラシック音楽にDolby Atmosおよび空間オーディオを積極的に取り入れています。これまで20年にわたりSACD向けの5チャンネル・サラウンド制作を行ってきた経験は、新しい音楽体験を切り拓くうえで大きな強みとなっています。
先述のミネソタ管弦楽団とオスモ・ヴァンスカ指揮によるマーラー《交響曲第8番》の録音も、その一例です。現在、ストリーミングプラットフォームにて新フォーマットで配信されています。
Take5 Music Productionはこれからも、RMEの最先端技術とともに、最高品質のサウンドを追求し続けます。これから訪れる新たなイノベーションを楽しみにしつつ、クラシック音楽制作の可能性をさらに広げていきます。
