RME 30TH
ANNIVERSARY
30年にわたる、革新と信頼の歩み。
1996年、ドイツ・ミュンヘン近郊の町ハイムハウゼン。「開発者自身が本当に使いたい、理想の製品を創る」——自身もミュージシャンやサウンドエンジニアの経験がある彼らのこの純粋な情熱と、「革新的で高品質な製品とソリューションを、優れたコストパフォーマンスで提供する」という使命感からRMEの歴史は幕を開けました。以来、今日に至るまで妥協を許さない製品設計を貫き、プロオーディオ業界に革新をもたらし続けています。
RMEの根底にあるのは、「原音をありのままに捉え、何も足さず、何も引かずに伝える」という揺るぎない哲学と、いかなる状況でも確実に機能し続けるための強固な安定性です。それは単にスペックを誇示するものではありません。音に携わるすべての人が機材トラブルや技術的制約に煩わされることなく、純粋に「音」と「創造性」に没頭できる環境を提供するためです。
「生み出した製品は、自分たちの子供のようなもの」。そう語る開発チームの深い愛情と責任感は、ドライバー/ファームウェアの継続的なアップデートによる、他に類を見ない長期的なサポートにも表れています。音楽制作、放送、ライブ、研究機関、そして高品位なホームリスニング環境まで、世界中のユーザーから大きな信頼を寄せられる「リファレンス」としての地位は、この徹底した姿勢によって確立されました。
日本においても、RME製品が紹介されて以来、マイスターの国が育んだ、原音に忠実で色つけのないサウンドは、多くのプロフェッショナルや音楽ファンに愛され続けています。
これまでも、そしてこれからも。
30年の軌跡と、進化し続ける音の革新を紐解きます。
RMEの歴史は、デジタルI/O技術の革新とDAW環境との真の融合を追求してきた歩みそのものです。
◼︎RMEの原点 デジタル信号を可視化する「DAM-1」
1996年、デジタル・オーディオが普及し始めた当時、市場において、デジタル・オーディオ信号を正確に測定・解析できる機材は、ごく一部の非常に高価なシステムに限られていました。そうしたなか、先進的な機能を比較的手頃な価格で実現したRMEの記念すべき第一号機が、Digital Audio Monitor「DAM-1」です。
DAM-1は、音声データの演算処理を外部DSPDSP (Digital Signal Processor)現実のアナログ信号から変換されたデジタルデータを高速処理する専用チップ。PCのCPUに代わって重い演算を行うため、システム全体の負荷を軽減できます。DSPハードウェアに委ね、PCへの負荷を最小限に抑えながらそれを制御・表示するWindowsソフトウェアを組み合わせた、当時としてはユニークで画期的なデジタル・オーディオ解析システムでした。デジタル・オーディオ・データを包括的かつ使いやすい形で可視化・解析するこの画期的なアプローチは、現在RMEの全ユーザーに無償提供されているソフトウェア「DIGICheck」「DigiCheck NG」へと受け継がれています。
◼︎FPGAがもたらした独自設計とビットパーフェクト伝送
DAM-1の開発に続き、RMEはPC用デジタル・オーディオ・カード「DIGI32シリーズ」を発表します。当時の一般的なハードウェア設計では、採用する汎用チップセットによって仕様が制限され、ドライバー側でデータの補正や変換、マッピングといった処理を行う必要が生じ、それがシステム性能の低下(CPU負荷)を引き起こしていました。
これに対してRMEは、自由に回路設計できる「FPGAFPGA (Field Programmable Gate Array)製造後の機器の内部回路やプログラムを書き換えできるICチップ。RMEは自社で独自のオーディオ・コアをプログラムし、完全なデータ転送を実現しています。FPGA(Field Programmable Gate Array)」を中核に採用し、製品に必要な機能を自ら設計する道を選びました。これによりドライバーがデータ転送を仲介・変換する必要がなくなり、PCのシステム負荷をほぼゼロに抑えることに成功。DIGI32シリーズにおいて、「録音したデータを、あらゆる状況において1ビットたりとも変えることなく、そのまま再生できる」という「完全な1:1のデータ転送 – ビットパーフェクト」を確立したのです。
FPGAを活用してコア技術を自ら設計する姿勢は、RMEの製品開発を特徴づける重要な礎となり、現在まで一貫して受け継がれています。
◼︎24 bit/96 kHz、ゼロ・レイテンシー、そして安定したクロック同期へ
続く「DIGI96シリーズ」ではフル24 bit/96 kHz対応を推し進め、DirectXDirectXWindowsの音楽制作ソフトとハードウェア(オーディオカード)を効率的に接続するための技術。当時のPC環境において、業務用の高度な音声処理をスムーズに行うための画期的な仕組みでした。DirectXをサポートする世界初の業務用オーディオ・カードとして完成。さらに入力信号を直接出力へ送る「Zero Latency MonitoringZLM (Zero Latency Monitoring)入力信号をハードウェア内部で直接出力へ送ることで、PCの処理遅延(レイテンシー)を感じさせないリアルタイム・モニタリング。Zero Latency Monitoring」を搭載し、従来のPCベースのシステムでは不可能だった、テープレコーダーさながらの遅延のない操作感をもたらしました。
さらに、1999年に登場した52チャンネルもの入出力を誇る「DIGI9652(Project Hammerfall)」においては、PCレコーディングのマルチトラック化を加速させました。独自のクロック同期確認機能「SyncCheckSyncCheckすべての入力信号の同期状態を常時監視し、クロックのズレや不整合を瞬時に検知・表示する独自機能。SyncCheck」を搭載したほか、PCに一切の負荷をかけない「ゼロCPU負荷技術」を備えた世界初のASIOASIO (Audio Stream Input/Output)Steinberg社が提唱した低遅延オーディオドライバ規格。RMEはハードウェアレベルで高速処理します。ASIOハードウェアとして完成します。実際の運用環境で実測1.5msという超低レイテンシーと高い安定性を誇るこの技術は、当時のパフォーマンスの限界を打ち破り、プロフェッショナルの間で揺るぎない評価を築き上げました。
◼︎スタジオ環境をそのまま持ち出せるHammerfall DSPシステム
そして、この革新的な系譜から2001年に誕生したのが、「Multiface」や「Digiface」をはじめとするHammerfall DSPシステムです。当時としては画期的なアナログ・デジタル・MIDI入出力をコンパクトなハーフラック・サイズの筐体に集約。CardBusCardBus1990年代後半からノートPCに採用された、カード型の32ビット拡張スロット規格。デスクトップPCの内部スロットと同等の性能を持ち、CPUに負荷をかけず、機器間で直接通信できるのが特徴です。CardBusとPCIPCIパソコンの内部にサウンドカードなどの拡張基板を接続するための標準的なスロット規格。マザーボードに直接取り付けることで、PCにさまざまなハードウェア機能を追加できます。PCIインターフェイスを介してノートPCとデスクトップPCの両方に対応。スタジオクオリティのマルチトラック録音・再生環境をそのまま外へ持ち出すことを可能にし、当時の業界に大きな衝撃を与えました。
◼︎ハードウェアDSPミキサー「TotalMix」の誕生
Hammerfall DSPシステムの真髄とも言えるのが、独自のハードウェアDSPミキサー「TotalMix」です。このDSPミキサーは、PCのCPUに負荷をかけることなく、すべての入力および再生チャンネルを任意の出力へ自由に、かつゼロ・レイテンシーでルーティング・ミックスすることを可能にしました。
「本格的なマルチチャンネルI/Oを、どこでも、誰にでも」という画期的な発想と、外部ミキサーを不要にするほどの実用性を持つTotalMixは、現在のデジタル・オーディオ制作環境の発展とRMEユーザーにとって無くてはならないツールとなりました。
RMEが創業期に確立した「超低レイテンシーと強固な安定性」は、2004年に登場した「Fireface 800」によって新たな次元へと突入します。
◼︎PCIで培った性能をFireWireへ
Fireface 800は、世界で初めてFireWire 800FireWire 8001980年代後半から1990年代前半にかけてAppleによって開発された高速通信規格「FireWire」の拡張版。従来の2倍にあたる約800Mbpsの通信速度を持ち、大容量の音声データを安定して転送できるためプロ用機器に広く採用されました。FireWire 800接続を採用した画期的なオーディオ・インターフェイスでした。その内部には、ADI-8コンバーターのアナログ技術、QuadMic/OctaMicのマイク・プリアンプ性能、Hammerfall DSPシリーズのTotalMix、高度なオーディオ解析ツールDIGICheckなど、RMEが培ってきた最高峰の技術と実績が惜しみなく注ぎ込まれています。
また、当時のFireWire接続において、多くのメーカーが汎用の通信チップ(コントローラーIC)に依存する中、RMEは一貫して効率的で信頼性の高いドライバーを自社開発し、FPGA上に独自のオーディオ・コアをゼロからプログラムする設計思想を貫きました。この妥協なき姿勢は、2009年の「Fireface UC」で結実します。
◼︎USB 2.0接続での業務用途レベルの超低レイテンシーを実現
当時、オーディオ伝送には不向きとされていたUSB 2.0接続において、RME Fireface UCは世界で初めて業務用途レベルの超低レイテンシー・パフォーマンスを達成。以来、15年以上経過する今でもUSB 2.0対応のRME製品は第一線で稼働し続けています。また、USB 3.0やThunderboltテクノロジーにおけるマルチチャンネル・オーディオの道をも切り拓きました。
◼︎OSのアップデートに対応する長期的なサポート体制
FPGAを用いてハードウェアの根幹から自社でプログラムするRMEの独自設計がもたらす最大の恩恵は、OSのアップデートや仕様変更に左右されない、長期的かつ柔軟なサポートの実現です。発売から十数年が経過した初期のFirefaceシリーズが、世代交代が繰り返されるOS環境においても第一線で稼働し続けてきた事実は、RMEの卓越した開発力と持続的なサポート力を物語っています。
このDNAは、圧倒的なクロック精度を誇る高度なジッター抑制技術「SteadyClock」とともに、現在のFireface UCX II、Fireface UFX II、Fireface UFX III、Fireface 802 FS、そしてそのエッセンスをモバイル・サイズに凝縮したBabyface Pro FSへ脈々と受け継がれています。 「原音をありのままに捉える」という哲学と、「強固な安定性」。これらは単なるスペックの枠を超え、ユーザーが何の不安もなく音楽制作やリスニングに没頭できる環境そのものを提供し、時代が移り変わっても決して揺らぐことのない「リファレンス」として、今この瞬間も世界中の現場を支え続けています。
RMEの歴史を語る上で欠かせないのが、音楽制作に留まらない多様な現場を堅牢に支え続けてきたAD/DA/DDコンバーターおよびマイクプリアンプ製品の軌跡です。
◼︎リファレンス・コンバーターの確立と「SteadyClock」技術
1999年、RMEは8チャンネルAD/DAコンバーター「ADI-8 PRO」を発売し、デジタル・オーディオの多チャンネル化を推進しました。続く「ADI-8 DS」は、いち早く24 bit / 96 kHzの高解像度変換に対応。徹底して色付けを排した透明なサウンドを追求することで、RMEのコンバーターはリファレンス機器としての評価を確立していきます。
デジタル信号をアナログの「原音」に忠実に入出力するためには、「ジッタージッターデジタル機器間で音声をやり取りする際に生じる、クロック(基準となる時間)のわずかな揺らぎ。音質劣化やノイズの直接的な原因となるため、高音質な再生や録音にはこのジッターをいかに抑え込むかが極めて重要になります。ジッター」と呼ばれるデジタル特有のわずかな時間のズレを抑制することが重要です。RMEは、多チャンネル伝送規格「MADIMADI(Multichannel Audio Digital Interface)オーディオ技術者協会(AES)によって1991年に規格化された、プロフェッショナル向けの多チャンネル・デジタルオーディオ伝送規格。「AES10」とも呼ばれ、1本の同軸ケーブルや光ファイバーケーブルで、24ビット/192kHzという高解像度に対応し、オーディオ・データを最大64ch分も一括伝送することが可能。大規模なレコーディングや放送局のシステムにおいて、大量のケーブル配線を1本に集約できる画期的な技術として普及しました。MADI」に対応する製品を開発する過程で、独自の高精度ジッター抑制技術「SteadyClock」を生み出しました。2002年に、MADI/ADATADAT現在では主に、1本の光ケーブルで最大8チャンネルのデジタル音声を伝送できる通信規格のことを指します。元々は同名の8トラック・デジタル録音機のために開発されましたが、現在の大半の現場では、オーディオインターフェースの入出力を手軽に拡張する標準規格として広く普及しています。ADATフォーマット・コンバーター「ADI-648」に初めて導入されたこの技術は、外部クロックの品質に左右されにくい安定した信号同期を実現し、クリアな音質と高い信頼性をもたらしました。その画期的な性能から、翌2003年にはPCIカード「HDSP 9632」にも導入され、以降もほぼすべてのRMEオーディオ・インターフェイスにも標準搭載されることとなりました。現在ではフェムト秒(1000兆分の1秒)単位の精度を誇る「SteadyClock FS」へと進化し、驚異的な解像度を支え続けています。
◼︎音をありのままにキャプチャーするマイクプリアンプ
デジタルノイズを高精度に抑制して得られる、原音に忠実で色付けのないサウンドは、録音の入り口を担うマイクプリアンプの分野においても遺憾なく発揮されています。2004年発表の「OctaMic / OctaMic-D」は、歪みを抑え、劣化させることなくアナログ・マイク信号を増幅し、高品質なアナログ/デジタル出力を両立。さらに2006年には、究極のフロントエンドとして絶大な評価を得たハイエンド・プリアンプ兼ADコンバーター「Micstasy」を、翌2007年にはデジタル・マイク専用の「DMC-842」を発表しました。現在では、AVB/MADIに対応する「12Mic」と、Dante/MADIに対応する「12Mic-D」をラインアップ。いずれも12チャンネルのマイクプリアンプとして、高精度なAD変換と柔軟なオーディオネットワーク接続を実現しています。
◼︎スタジオから研究機関まで。あらゆる現場の「リファレンス」へ
「SteadyClock」機能が追加された「ADI-648」以降も、デジタル・フォーマット変換やサンプルレート変換を可能にする「ADI-192 DD」や、卓越した柔軟性を誇る「ADI-642」、精密なアナログ回路設計を誇るハイエンド・コンバーター「ADI-8 QS」など妥協のないコンバーター・ラインナップを次々と市場に投入。
2009年には、RMEコンバーター技術の結晶として、32/16ch ハイエンド アナログ ⇔ MADI/ADATコンバーター「M-32/16」シリーズをリリース。この系譜は現在、MADIに加え、AVB/Danteにも対応する最新の「M-32 Pro II」シリーズや、「M-1620 Pro」シリーズへも引き継がれ、アナログ信号と多チャンネルのデジタル音声を高精度に変換します。RMEのコンバーターは、商業音楽制作や放送局の伝送システム、大規模なライブ現場、さらには高い精度が求められる研究機関まで、幅広い分野で業務用機器の「リファレンス」の一つとして、ご評価をいただくまでに至りました。
長年培われた開発技術とノウハウは、やがて「開発者自身が一人の音楽リスナーとしての理想を追求する」という熱い情熱によって、新たなデバイスへと昇華されます。
◼︎多様なニーズに応えるオーディオ・ソリューションの誕生
2016年に発表された「ADI-2 Pro」は、プロ用途の枠を超え、ハイエンド・リスニング環境でも真価を発揮するユニークなデバイスとして、瞬く間にオーディオファンからも大きな注目を集めました。優れたAD/DA変換性能に加え、超高出力の「Extreme Power」ヘッドフォン出力を搭載。さらに、内蔵DSPDSP (Digital Signal Processor)現実のアナログ信号から変換されたデジタルデータを高速処理する専用チップ。PCのCPUに代わって重い演算を行うため、システム全体の負荷を軽減できます。DSPによる5バンド・パラメトリックEQやラウドネス機能ラウドネス機能人間の耳は、音量が小さくなるほど低音と高音が聞こえにくくなる特性を持っています。ラウドネス機能は、この聴覚特性に合わせて特定の帯域をEQで補正し、小音量再生時でも聴感上のサウンドバランスを適切に保つための機能です。ラウドネス機能などを備え、リスナー自身が好みや再生環境に合わせて音を緻密に調整できる設計は、大きな衝撃を与えました。
◼︎ADI-2 DAC – ホーム・リスニングの新たな基準
2017年には、ホームリスニング用途に特化し、AD機能を省いた再生専用モデル「ADI-2 DAC」を発表。フェムト秒(1000兆分の1秒)精度でジッタージッターデジタル機器間で音声をやり取りする際に生じる、クロック(基準となる時間)のわずかな揺らぎ。音質劣化やノイズの直接的な原因となるため、高音質な再生や録音にはこのジッターをいかに抑え込むかが極めて重要になります。ジッターを抑制する「SteadyClock FS」をRME製品で初めて搭載し、原音に忠実な再生性能と強力なDSP機能はそのままに、超低ノイズな高感度インイヤー・モニター出力やリモコンを追加するなど、音楽ファンの細やかなニーズに徹底的に寄り添う設計がなされました。「ADI-2 Pro」をSteadyClock FS対応へと進化させた「ADI-2 Pro FS」も発表され、再生専用モデルと録音・再生対応モデルの双方がそろったことで、ADI-2シリーズは幅広い用途に応えるラインナップを確立しました。
◼︎さらなる高みへ進化を続けるADI-2シリーズ
そして2022年、ADI-2シリーズのフラッグシップとして「ADI-2/4 Pro SE」が発表されます。新たに4.4mm Pentaconnバランス・ヘッドフォン出力を標準搭載したほか、レコード愛好家向けにMMカートリッジ対応の高精度デジタル・フォノアンプ機能「RIAAモード」を実装。2chアナログ入力と独立した4chアナログ出力を備え、プロフェッショナル用途とハイエンド・リスニングの双方に応えるさらに高い柔軟性を実現しました。そして、RME創立30周年を迎えた2026年、新世代モデル「ADI-2 Pro EX」が登場。これまでの多機能性を継承しつつハードウェア設計を刷新し、オールインワン・リファレンス・コンバーターの新たな基準を更新し続けています。
◼︎作り手の音をそのままリスナーへ
ADI-2シリーズにより、RMEの比類なき技術はスタジオの枠を飛び越え、ハイエンド・オーディオファンの間でも広く支持されるようになりました。エンジニアがスタジオで聴いている音をそのままリスニング環境へ届けるという、新しい視点を創出しました。音質、機能、精度を徹底的に追求したADI-2シリーズは、今や音楽制作の最前線だけでなく、リスニングを楽しむ音楽ファンの皆様から広く支持をいただき、時代を超えたオーディオの新しいスタンダードとして高品質なモニタリング環境を提供し続けています。
◼︎MADIの可能性を確実なものにしたRMEの技術「SteadyClock」
MADIは1980年代末から開発が進められ、1991年に規格化されました。64chもの多チャンネル信号を1本のケーブルで長距離伝送する画期的な規格として注目されましたが、高いジッタージッターデジタル機器間で音声をやり取りする際に生じる、クロック(基準となる時間)のわずかな揺らぎ。音質劣化やノイズの直接的な原因となるため、高音質な再生や録音にはこのジッターをいかに抑え込むかが極めて重要になります。ジッターによって音質の劣化や同期の不安定が問題視されていました。長距離の伝送も、初期のMADIでは別途ワードクロックなどによるクロック供給が必要となり、「扱いにくい規格」として認知されていました。
RMEは、このMADIに対しても、既成の回路/チップではなく必要な機能を独自に開発してFPGAFPGA (Field Programmable Gate Array)製造後の機器の内部回路やプログラムを書き換えできるICチップ。RMEは自社で独自のオーディオ・コアをプログラムし、完全なデータ転送を実現しています。FPGAに実装します。その中核となったのがジッター抑制技術「SteadyClock」です。MADI信号に含まれるジッターを抑制することを可能にし、音質劣化・不安定な同期といった問題点を解決しました。その結果、MADIフォーマットの発展と普及に貢献することとなりました。
◼︎多チャンネル伝送の普及に貢献したRMEのMADI製品群
MADIの歴史的ブレイクスルーとなったのが、「SteadyClock」機能が初搭載された64チャンネルMADI/ADATADAT現在では主に、1本の光ケーブルで最大8チャンネルのデジタル音声を伝送できる通信規格のことを指します。元々は同名の8トラック・デジタル録音機のために開発されましたが、現在ではオーディオインターフェイスの入出力を手軽に拡張する標準規格として広く普及しています。ADATフォーマットコンバーター「ADI-648」です。翌2003年には、MADI対応PCIPCIパソコンの内部にサウンドカードなどの拡張基板を接続するための標準的なスロット規格。マザーボードに直接取り付けることで、PCにさまざまなハードウェア機能を追加できます。PCIカード「HDSP MADI」が登場します。RMEが「世界で最もパワフルなデジタル・オーディオ入出力カード」と誇ったこの製品は、当時の業界を驚愕させるコストパフォーマンスで登場し、多チャンネル伝送普及の扉を一気にこじ開けました。これを皮切りに、時代に合わせてPCI ExpressPPCI Express従来のPCI規格に代わって普及した、パソコン内部の高速な拡張インターフェイス規格。データ転送方式の変更により大幅な高速化とスロットの小型化を実現しており、現代のPCにおいてハードウェアを追加するための標準的な接続規格となっています。PCI Express対応の「HDSPe MADI」へと発展。さらに、驚異の390チャンネルものオーディオ処理を独自のFPGAチップでレイテンシーなく完結させる「HDSPe MADI FX」へと到達します。
また、USB 3.0を世界で初搭載し、USB接続でありながら膨大なチャンネル数を扱うオーディオ・インターフェイス「MADIface XT」、極小筐体にMADI入出力を収めた「MADIface USB」の登場により、数百チャンネルにも及ぶ大規模なシステムを、コンパクトなサイズへと小型化することにも成功しました。RMEは複雑を極める多チャンネル・ルーティングを、扱いやすく安定したシステムへと昇華させました。MADIは大規模なライブ・レコーディングや中継車における業務用のプロフェッショナル規格として世界中に定着し、その技術や製品群は今もなおRMEの中核を支え続けています。
◼︎MADIとネットワーク・オーディオ伝送規格
近年、プロフェッショナル・オーディオの世界では、標準的なネットワーク(LAN)ケーブルを用いる「ネットワーク・オーディオ伝送規格(DanteやAVB / Milan)」の導入が進んでいます。異なる伝送規格が共存するなかでも、RMEは堅実なアプローチを行なっています。
「Digiface Dante」や「Digiface AVB」といったモバイル・インターフェイス群を、PC/ネットワークとの接点とし、「AVB Tool」や「12Mic」、「M-32 Pro」などMADIとネットワーク・オーディオ伝送規格(Dante、AVB)の双方に対応するマイクプリアンプやコンバーター製品を用いることで、既存のMADIシステムと次世代ネットワーク・オーディオ伝送規格の統合を実現しました。MADI接続を中心とするシステムのまま、システム全体が次世代ネットワークとの橋渡しをする「巨大なシグナル・ルーター」としての役割を果たしたのです。
伝送方式がMADI(光/同軸)であれ、ネットワーク・ オーディオであれ、RMEの根底にある哲学は揺るぎません。原音に忠実な音質を実現するために必要な機能は、FPGAによるゼロからの設計を中心に、規格の壁を越えて受け継がれ、プロフェッショナルの現場が求めるクオリティを提供します。
RMEのオーディオ・インターフェイスは、他社製の汎用通信チップに依存せず、オーディオ・コアから通信プロトコルに至るまですべてを独自の「FPGA(Field Programmable Gate Array)」内にプログラミングすることで、高音質、高機能、安定性を実現しています。
RMEの開発チームは、自らが現場で機材を使うエンジニアでもあります。だからこそ、スペック上を飾る機能以上に「現場で起こりうるさまざまなトラブルを、いかにハードウェア・レベルで回避するか」という堅牢な設計を徹底して追求してきました。 さまざまな問題をユーザーが意識する必要のないように、影で支え続けるRMEのコア・テクノロジーをご紹介します。
デジタル機器を安定してつなぐクロック同期・管理技術
AutoSync
複数のデジタル機器を使用する際、クロックの同期は安定した音声伝送に欠かせません。RMEは1997年、入力信号に応じて適切なクロックソースを自動的に選択する「AutoSync」を開発しました。
SyncAlign
/ 1999年SyncCheck
続いて、チャンネル間のサンプル精度のズレやデータの入れ替えを防ぐ「SyncAlign」や、同期状態を可視化する「SyncCheck」を確立。
Intelligent Clock Control
さらに、AutoSync・SyncCheckを発展・統合し、クロック監視や自動切り替え、最後に正常だったサンプルレートの保持などを一体化させた包括的なクロック管理アーキテクチャ「Intelligent Clock Control(ICC)」へと進化させました。本番中のクリックノイズや同期損失のリスクを極限まで排除するこれらの技術群が、現在でもプロの現場での厚い信頼性を実現しています。
音を正確に捉える解析・計測技術
DIGICheck
/ 2020年DigiCheck NG
RMEの原点である第一号機、デジタル・オーディオ・モニター「DAM-1」。その高度な計測技術と設計思想を受け継ぎ、1998年に登場したのが解析ソフトウェア「DIGICheck」です。オーディオ・コアを自社設計している強みを活かし、OSのオーディオ層を介さずハードウェアからダイレクトにデータを読み出して演算。オーディオ信号の状態を高精度に可視化します。現在は最新のOSやディスプレイ環境に向けて全面的に再設計された次世代版「DigiCheck NG」として、さらなる進化を続けています。
柔軟なミキシング/ルーティングを可能にするDSPミキサー
TotalMix
/ 2010年TotalMix FX
PCのCPUに負荷をかけずにハードウェア・レベルで直接信号を送出する「ゼロ・レイテンシー・モニタリング(ZLM)」の思想から、2001年にHammerfall DSPシステムとともに登場したのが、RME独自のDSPミキサー「TotalMix」です。本体に内蔵された強力なFPGAチップ上で直接駆動するため、すべての入力・出力へのルーティングを事実上ゼロ・レイテンシーで行い、処理がRMEハードウェア内で完結するため、コンピューターに問題が生じた場合でも、ハードウェア入力のミックスやルーティングは維持されます。現在はDSPエフェクトやコントロール・ルーム機能を追加した「TotalMix FX」へと進化し、RMEオーディオ・インターフェイスを支える欠かせない存在となっています。
デジタル・オーディオの同期を支えるジッター抑制技術
SteadyClock
/ 2017年SteadyClock FS
高度なクロック同期技術への探求は2003年、RME独自の画期的なジッター抑制・クロック再構築技術「SteadyClock」へと結実しました。デジタル伝送時に不可避なジッター(時間の揺らぎ)を極限まで抑え、機器内部で超低ジッターのクリーンなクロックへと即座にリフレッシュします。外部のクロック品質による影響を抑え、安定した同期を実現するとともに、AD/DAコンバーター本来の性能を引き出します。現在はフェムト秒(1000兆分の1秒)精度の「SteadyClock FS」へと進化し、RMEの揺るぎない音質基準を支え続けています。
コンピューターとの安定した接続を支える独自通信技術
FireWireコア
/ 2009年USBコア
/ 2013年USB 3.0コア
一般的な製品が他社製の汎用通信チップに依存する中、RMEは2004年に独自の「FireWireコア」、2009年には独自の「USBコア」を自社のFPGA内に直接プログラミングする大きな挑戦を形にしました。さらに2013年には、世界初のUSB 3.0インターフェイス「MADIface XT」を発表し、独自開発のUSB 3.0コアによって「394チャンネル」という驚異的な多チャンネル伝送を達成。サードパーティ製チップのブラックボックス化された仕様や制限を排除することで通信のボトルネックを完全に解消し、汎用規格の常識を覆す超低レイテンシーと、膨大な多チャンネル伝送における優れた通信安定性を実現しています。
コンピューター不要のマルチトラック録音
DURec
ライブ本番や一発録りの現場で「録音を止めない」ための究極のセーフティライン。2010年に発売された「Fireface UFX」に、翌2011年のファームウェア・アップデートで追加実装された「DURec」は、PCを一切介さず、USBメモリーやハードディスクを本体のUSB端子に接続して、直接録音を行う機能です。DAWと同時にバックアップ録音を回しておけば、万が一PCがフリーズしてもハードウェア単体で録音は継続されます。FPGAの書き換えのみで機材を「スタンドアロン・レコーダー」へと変貌させたこの機能は、失敗の許されない収録現場に、さらなる安心と信頼性をもたらしました。
モバイル端末に高品質なオーディオ入出力環境を追加
Class Compliant モード
Class Compliant(CCモード)とは、専用ドライバーをインストールしなくても、機器をUSB接続するだけでOSに認識させ、そのまま使用できるようにする標準規格です。 2012年の「Fireface UCX」は、プロフェッショナルな多チャンネル入出力を備えながら、CCモードによってiPadと接続できる、世界初のプロフェッショナル・オーディオ・インターフェイスとなりました。 この機能は、専用ドライバーを必要とせずiPad・iPhoneとの接続を可能にし、モバイル環境におけるプロフェッショナルな録音・制作の可能性を大きく広げました。さらに、FPGAを中核とする独自のハードウェア設計により、ファームウェア更新によって既存の過去モデルへも後からCCモードを追加するなど、発売後も製品の価値を高め続けるRMEの姿勢を象徴する機能です。
最新環境へいち早く対応し長く使い続けられるFPGAの独自設計
RME Core
Technology
FPGAによる通信コア自社開発の真価は、最新のPC環境へのスピーディーな対応力と、過去の製品を長くお使いいただけるように支える「サポート体制」の両極に表れています。
Apple Silicon環境における「DriverKit」対応や、次世代の「Windows on ARM」へもいち早くネイティブ・ドライバーを独自開発し、次世代環境でもエミュレーションを介さず超低レイテンシーとフル機能を提供。同時に、ファームウェアの書き換えによってハードウェア自体を進化させ、過去の機材にDSP機能を追加したり、発売済みの製品を後からiPad対応の「CCモード」へと生まれ変わらせる離れ業も実現してきました。
20年前の機材すら最新環境で稼働させ続ける。この「進化し続ける、生きたハードウェア」を実現する姿勢こそが、RME最大のテクノロジーです。
次の時代も、音に向き合って
1996年の創業から30年。日本においても、数え切れないほどのレコーディング・スタジオやライブステージ、そしてクリエイターの皆様の多様な制作拠点において、RMEは選ばれ続けてきました。
時代がアナログからデジタルへ移行し、コンピューターの環境がどれほど激変しようとも、RMEの徹底した「原音忠実」の哲学と、それを実現するための「確かな安定性」「自社開発によるコアテクノロジー」への探求が揺らぐことはありませんでした。ユーザーが機材の存在を意識することなく、ただ純粋に目の前の「音」と向き合える環境を提供すること。それこそが、RMEが追求し続ける真の価値です。
この揺るぎないテクノロジーと妥協なきクラフトマンシップを日本の皆様へお届けし、その日々の活動を支え続けられることを、私たちは誇りに思っています。。
これまでの30年にわたる多大なるご愛顧に、心より深く感謝申し上げます。
次の時代も、皆様の最高のパートナーとして共に歩んでいけるよう、RMEの真髄を日本の現場へ届け続けます。
RME PRODUCTS
製品年表 (1996 – 2026)
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1996
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1997
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1998
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1999Hammerfallシリーズ (DIGI9652 / DIGI9636)DIGI96/8 PAD / DIGI96/8 PST
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2000
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2001Hammerfall DSP System(Digiface / Multiface)HDSP PCI / HDSP Cardbus
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2002
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2003HDSP 9632 / HDSP 9652HDSP MADI
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2004Fireface 800ADI-2ADI-4 DDMADI Bridge
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2005Multiface IIADI-192 DDADI-642HDSP AES-32
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2006Fireface 400ADI-8 QSADI-6432MADI Converter
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2007HDSPe PCI Card / ExpressCardHDSPe MADIDMC-842
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2008HDSPe RayDAT / HDSPe AESHDSPe AIO
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2009Fireface UC
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2010Babyface
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2011
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2012Fireface UCXARC (Advanced Remote Control)HDSPe MADI FX
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2013MADIface XTMADIface USBMADI Router / AES3 Router / AES3 Converter / ADAT Router / ADAT ConverterOctaMic XTC
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2014
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2015
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2016ADI-2 ProMADIface ProFireface UFX+
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2017Fireface UFX IIDigiface USBADI-2 Pro AE(Anniversary Edition)
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2018Digiface AVB / Digiface DanteM-32 AD Pro / M-32 DA ProADI-2 FSADI-2 Pro FS
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2019
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2020ADI-2 Pro FS R Black Edition12Mic / AVB ToolM-1610 Pro
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2021
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202212Mic-DADI-2/4 Pro SE
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2023Fireface UFX IIIFireface 802 FSDigiface AES
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2024LNI-2 DC / DPS-2*MADIface XT IIM-1620 Pro / M-1620 Pro DHDSPe AoX-M / HDSPe AoX-D
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2026















