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初音ミク ライブパーティー 2013 in Kansai(ミクパ♪)-39’s Spring the 3rd Synthesis-

ユーザーストーリー

初音ミク ライブパーティー 2013 in Kansai(ミクパ♪)-39’s Spring the 3rd Synthesis-
読了時間の目安:約12分(5,900文字)
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2013年3月9日に和歌山ビッグホエールで開催された「初音ミク ライブパーティー 2013 in Kansai(ミクパ♪)-39’s Spring the 3rd Synthesis-」では、SSDを搭載したラップトップをベースに完全二重化されたフルデジタル・システムの基幹プラットフォームとして、RMEのMADI製品を導入。もはやバーチャルの域を超えた圧倒的なライブ・パフォーマンスだけでなく、64chのバックアップ、そしてWOWOWでの生中継というミッション・クリティカルな現場を支えたMADIテクノロジーについて、使用機材やセッティングの詳細を、バンドマスター兼マニピュレーターとして本イベントに参加した鈴木啓氏のお話とともにお届けします。

中継や多チャンネル収録にもオプティカル・ケーブル1本で対応できるMADI

初音ミク ライブパーティー 2013 in Kansai(ミクパ♪)

今回の初音ミク ライブパーティー 2013 in Kansai(ミクパ♪)は、6人のバンド・メンバーが初音ミクと一緒に生演奏を行うというスタイルのステージのため、通常のライブ・レコーディングとは勝手が異なる上に、WOWOWによるライブ中継と同時に多チャンネルでの収録も必要になるということで、機材をコンパクトに絞りながらオプティカル・ケーブル1本で64chの長距離伝送が可能なMADIの導入が検討され、RMEの機材でシステムを組むことに。サウンドを統括する鈴木氏が作業を行うFOH、つまりPA卓やすべての再生系を行うセクションから中継のために用意されたミックス室までは100メートル以上の距離があリ、この間はMADIのオプティカル・ケーブルで配線がなされました(ちなみにMADIのオプティカル・ケーブルは、最長2kmまでの伝送が可能)。この距離をアナログ・マルチのケーブルで引き回すのは非常に骨の折れる作業であり、トラブルが起きた際の原因箇所を特定するのも非常に難しいものとなりますが、MADIのオプティカル・ケーブルの場合、万が一ケーブルにトラブルが起こっても細くて軽いオプティカル・ケーブルをそのまま取り替えてしまうことによりすぐに復旧が可能。事前にバックアップとしてもう1ライン通しておけば、トラブルが起こったとしてもケーブルの両端を差し替えるだけで作業は完了となり、高いリスク・マネージメントが必要な現場にはMADIは正にうってつけのソリューションと言えます。

当日のシステム配線の詳細ですが、図を見ていただいてお分かりのように、再生、録音、中継というすべてのセクションにバックアップが用意されており、やはり、このようなライブの現場においては冗長化が非常に重要であることが伺えます。そして、冗長化を簡単に低コストで行えるというのもMADIの大きな利点。アナログ回線とは異なり信号のクオリティーを一切落とすこと無く無限に分配し、それぞれのロケーションへ長距離伝送することが可能なため、一旦信号をMADIに変換してしまえば、中継や収録に対してバックアップも含めてそれぞれ複数の回線に送ることも非常に簡単です。今回の現場でも、YAMAHAデジタルコンソールPM5Dに入った信号がADATオプティカルでRMEのADI-648に送られMADI信号に変換、それがMADI Bridge(ルーター)によって、収録用の2つのシステムと中継用の2つのシステム、計4系統に送られます。これだけの配線をアナログ・マルチケーブルで行おうとすると、ケーブルの物理的な量もさることながら当然コストも高くなりますし、なによりアナログ・ケーブルは銅線のため電磁気の影響によるノイズのリスクがつきまといます。その点、MADIのオプティカル・ケーブルを使えば電磁気の影響を受けないため、例えば、電源ケーブルと並行してケーブルを這わせても問題は生じず、ケーブルの取り回しに制限のあるコンサート会場でもストレス・フリーな作業が可能となります。

MADIオプティカル・ケーブル
MADIオプティカル・ケーブル

システム図

システム図

ちなみに、海外でも高い人気を誇る初音ミクは、これまでシンガポール、香港、台湾、ロサンゼルスでコンサートを行ったことがあり、今後も海外公演の需要が高いアーティストの一人。これまでの経験から「海外公演で機材を現地調達すると、頼んだ機材とは異なるものが用意されてしまうこともあり、そういう意味で、できるだけ国内ですべて用意して自分たちで持っていけるような、コンパクトなシステムが必要」(鈴木氏)ということで、今回機材の選定にあたっては「できるだけモノを減らす」というのが重要なコンセプトとなり、最終的にシステムの中核はノートPC数台と3U程度のラックひとつで構成できるまでのダウンサイジングがなされ、RMEのMADIソリューションはその部分でも大きく貢献しています。

なお、今回のシステムではほぼすべての信号処理がデジタル・ドメインで行われており、アナログ信号は中継の手前まで一切介在しないフルデジタルのシステム構成となっている点も特徴です。さらに、「中継」「収録」という目的のため、多チャンネルのまま長距離を伝送する必要がありました。鈴木氏はそのような状況の中で「アナログで延ばすというのは、折角ここまでデジタルでやっているのにもったいないな、というのがあって。MADIの存在はずっと知っていたんですけど、以前は、なかなか敷居が高かったり、出始めの頃は機材の値段も高いというのがあってなかなか導入できずにいたんですが、今回機材の選定を行う時に、収録を多チャンネルでという話があり、改めて、MADIが使えたらいいなあ、64チャンネル使えるし・・・」と思いつき、RMEのMADI機器の採用に踏み切りました。

今回の「初音ミク ライブパーティー 2013 in Kansai」の再生・中継・収録それぞれの詳細について、まず再生系ですが、ここでも各キャラクターのアニメーション、そして、ボーカルのシーケンス・データすべてに冗長化がなされており、何かあった場合はすぐにバックアップ・システムに切り替えられる準備がされていました。再生系にはAvid Pro Tools 10が使われ、「通常のコンサートと違うところは、やはり、ミクのボーカルやコーラスなど、ミクのすべてがシーケンスされているという部分。今回は初音ミクの声はすべてPro Toolsセッションでまとめていて、それぞれの曲をPro ToolsセッションでTDし、最終的にひとつのPro Toolsセッションにまとめています」とのこと。当日は、初音ミクだけではなく鏡音リン・レンやKAITOといったキャラクターも出演。キャラクターによって声の質が異なるため、Pro Tools上にて様々なプラグインで処理を行い、オートメーションを書き込む必要があり、取材を行った前日のゲネプロ段階では、まだプラグインが掛かったままの状態でファイルはバウンスされておらず、ホールの違い等による微妙な音の変化を聴きながら最終的な補正を行い、ゲネプロ後にすべてバウンスしたそうです。ゲネプロで走っているPro Toolsセッションのトラック数は50~60トラックで、本番では最終的に8トラック程にまとめられました。

なお、それぞれのキャラクターが歌う実際の楽曲以外に、劇中に出てくるサウンド・エフェクトや、オープニングのサウンド、特殊効果まで、今回はすべて鈴木氏が制作。さらに、10分の休憩時間に流れていた楽曲も今回のために鈴木氏が書き下ろしたものです。「トータルでサウンドをプロデュースしています。そういう意味では、普通のライブでは考えられない部分があり、そこがこの現場の面白いところ」と語る鈴木氏。すべての音に対して責任を持つバンド・マスターとして、そして音楽家としての鈴木氏の高い意識が伺える一面を垣間見ることができました。

なお、同期に関しては、「あくまでも映像(ミク)が主役。手元に映像を出すPCを置き、そこからタイムコードが発信されています。つまり、マスターは初音ミクなんです。」(鈴木氏)。一昔前のような重々しい機材は一切無く、非常に完結にまとめられており、低コストでハイクオリティーなシステムを組むことが求められる、ある意味で非常に現代的な同期システムとなっていました。なお、同期に関する具体的な方法は「企業秘密」とのこと。

HDSPe MADIface

次に収録の部分では、「収録はStudio Oneで行っています。Pro Tools 10はCoreAudio経由で使用する際に32chの制限があるので、今回のシステムでは使用できませんでした。Studio Oneは前々から良いという話を色々なところから聞いていたのですが、普段、Pro Toolsで仕事をしているので、なかなか試してみる機会がなかったんですね。だた、今回Pro Toolsが使えないということで、まず1台Studio Oneを導入して使用してみたところ、その動作の軽さに非常に驚いたんです。触った感じのレスポンスが明らかに軽いんですよね」(鈴木氏)。Pro Tools 10では、Core Audio/ASIOでの使用時に32chのトラック数制限が課されているため、今回のように32chを超えるトラックを同時に収録する必要があるケースでは使用することができず、軽くて音がいいと評判のStudio Oneを使うことになったようです。

メイン・レコーダー用のPCのインターフェイスとしてはRMEのHDSPe MADIfaceが使われていました。「僕の手元のノートと、もうひとつバックアップとして中継用のミックスを行う部屋でもStudio Oneで多チャンネル収録を行い、二重化しています」(鈴木氏)。ちなみに、先日HDSPe MADIfaceの次世代モデルとしてMADIface USBが発表されたので、今後はUSB接続でさらに便利にシステムを組むことができるようになることでしょう。なお、今回のバックアップ・レコーディング・システムには、HDSPe MADI FXが使われました。

MADIをベースとしたシンプルなシステム

もちろん、収録においても冗長化はマスト。「64chを、しかもノートPCで簡単にバックアップがとれるというのも、実は凄いことなんですよね。なかなかみんな解ってくれないんですけど、感動ものですね。今までは、同じことをしようと思うと大規模のシステムを組む必要があったのですが、非常に安価でコンパクトな機材で同じことができるようになっている。64チャンネルというのもいい。48chだと結構足りないこともあるので・・・。ストレージについては各PCに2台のSSDを内蔵搭載しています。外付けHDDはどうしても不安定になるし、SSDを内蔵にすることでポートも空く。しかも、今回のように40~50ch録ってもストレージの負荷は数%しかいかないですよ」(鈴木氏)。バックアップまで含んだ多チャンネルの非常に安定した録音システムを低コストで実現できる「MADI」は今後さらに高まると予想されるライブ・レコーディングの需要に対応するための重要なキーワードと言えます。

最後に中継部分の機材では、前述のようにMADI Bridgeで分岐されたMADI信号を多チャンネルのまま2回線、中継用ミックスを行う部屋に長距離伝送していました。ここで、SSLのAlpha-Link MADI SXによりMADI信号からAES/EBUに変換し、YAMAHA O2R96にデジタルで立ち上げ、中継用の2chアナログに変換、SSLのAlpha-Link MADI SXには入力されている信号を視認するためのLEDメーターが無いため、並列でRMEのM-32 DAが用意されていました。もちろん、メーター表示のためだけという訳ではなく、バックアップとしての役割も課せられており、MADI信号をフロントパネルのメーターにて確認しつつ、万が一Alpha-Link MADI SXにトラブルが起こった場合にはすぐさまM-32 DAに差し替えが行えるようになっていました。

今回のMADIをベースとした、シンプルでセーフティ、そしてスマートなライブ・サウンド・ソリューションは、今後も増え続けていくことでしょう。

鈴木啓

鈴木啓|シンクライヴ代表、株式会社エバートラストエンタテインメント代表

TMネットワーク、U-WAVE、BoA、倖田來未などのマニピュレーターとしてキャリアをスタートさせ、メジャー・アーティストのアリーナやドーム・ツアーなどでのマニピュレート、サウンドデザイン、ライブ・レコーディングや、クレモンティーヌや渡り廊下走り隊7などのアレンジも手がけるマニピュレーター、コンポーザー、アレンジャー。初音ミクをメインとしたライブ・パーティ「ミクパ♪」では、バンドマスター兼マニピュレーターとしても手腕を発揮。

ミクパ♪

ミクパ♪

世界中で話題沸騰のバーチャルシンガーである初音ミクをメインとしたライブ・ パーティ。2011年3月9日に東京で初めて公演を行い、同年8月に札幌、11月にはシンガポール、翌2012年3月に再び東京、同年10月には、海外ツアー(香港、台湾)、2013年2月に札幌公演、3年目の節目となった3月9日には初めての関西公演を実施。これまでの期間で、計8会場、15公演を開催し、延べ35000人以上の観衆を集めた初音ミクのライブステージ。
関西公演はWOWOWで生中継され、7/14と8/11にはWOWOWでリピート放送を予定。また、8月30日には関西公演を収録したブルーレイ、DVDの発売が予定されている。

オフィシャル・サイト:https://blog.piapro.net/
WOWOW特設サイト:www.wowow.co.jp/music/miku/

7/14(日)深夜1:00
8/11(日)午前4:00 再放送予定!

©SEGA/©Crypton Future Media, INC. www.piapro.net 
Graphics by SEGA/MARZA ANIMATION PLANET INC.
Organized by MAGES.

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